塩川の椅子張り物語 #7 ギタースツール

 

こんにちは、椅子張り担当の塩川です。

 

今回はギタースツールをご紹介します。
令和6年4月12~15日まで秋山木工さんにて開催された「第28回 職人と丁稚の木工展」に出品されたものです。
(この木工展はその名の通り、秋山木工さんに所属する職人と丁稚の皆さんが自作の家具でその腕を競う展示会で、年に一度開催される)

 

このスツールは同社の職人、伊藤忍さんによるデザインですが、実は座面の張りについてなにか良いアイデアはないかと事前に相談をいただき、椅子張り職人の名に恥じぬよう腕によりをかけて塩川が座面の意匠提案と製作を担当した、コラボレーション作品なのです!

 

伊藤さんのコンセプトは「ライブハウスで使い込まれた年月を感じさせるギタースツール」

4つの面に2本ずつある足掛けはすべて高さが異なっており、使う人が体格に合った高さを選ぶことができます。

そしてこの足掛け部分の塗装がポイントで、あえて真ん中あたりの色を薄くすることで、使い込まれた感を演出しています。(塗装についても熟練の塗装職人の方にコンセプトをお伝えして、希望通りに塗っていただいたそうです)

 

また、4本の脚と足掛けの接合部分は「面腰枘接(ホゾツギ)」※と呼ばれる技法が使われていますが、一番上の写真からわかるように、このスツールは上から下に向かって脚が外側に広がっているため、この接合部分の角度を計算して、隙間ができないようにするのはとても大変です…しかも本数がこんなにたくさん!!

※腰押し、面腰押しとも言う

 

……というように脚部が非常に手の込んだ仕事をされているので、張りについてもそれに引けをとらないものにする必要がありました。

座面には光沢のある本革を採用し、チェスターフィールドのような風格ある意匠に。

周囲には古びた色調の太鼓鋲をぐるりと施し、貫録アップ!

 

プレッシャーとの闘いではありましたが、最終的にすばらしいコラボレーション作品に仕上がったのではないかと思います!!

 

実際に使ってみるとこんな感じです。

 


塩川

椅子張り担当

■現在読んでいる本
『捜査・浴槽で発見された手記』
スタニスワフ・レム・コレクション9 / 国書刊行会 / 2024年3月

■座右の銘
“He who seeks beauty will find it.”
美を追い求めるものは必ずや美を見出す(写真家ビル・カニンガム)

■ストリートアーティストInvaderの”世界侵略マップ”を見ながら旅行したつもりになるのが好き

■(人生の)道に迷った時に観たくなるアートドキュメンタリー
『ビル・カニンガム&ニューヨーク』
『クリストのヴァレー・カーテン』および『ランニング・フェンス』

■YouTube の海で妖しく光るクラゲのような動画たち
『電車かもしれない』(近藤聡乃)
『Cuushe ‘Airy Me’』(久野遥子)
『忘れたフリをして』(原作 町田洋)
『THROAT NOTE』(Felix Colgrave)
『Animation Compilation ‘22-‘23』(Mason Lindroth)

■NDT (ネザーランド・ダンス・シアター)の神奈川公演チケットを衝動的に買ってしまいました
https://ndt2024jp.dancebase.yokohama