塩川の椅子張り物語 #6

こんにちは、椅子張り担当の塩川です。                                                           例年であれば桜もかなり咲き始めているこの時期ですが、今年は寒い日が続きますね…。4月に入ると一挙に開花するという予想もあるようなので、今からとても楽しみです。

 

私は直近の仕事として、Niels Otto Mollerが1954年にデザインしたModel 75ダイニングチェア(デンマークのJ.L.Moller Mobelfabrik 社製)の張り替えを行いました。製造年は具体的にはわかりませんが、同社の焼き印があることから、オリジナルであると思われます。チークの無垢材で作られた本体は非常に堅牢で、お客様が丁寧に使われていたということもあると思いますが、お預かりした4脚のいずれも接合部分が抜けるといった大きな破損がないことに、まず驚かされました。

 

今回の張り替えでは、座の土台となる麻のテープの編み込みが長年の負荷により切れてしまっていたため、これをすべて交換する必要がありました。麻のテープは伸縮性がほとんどなく、新しいテープを張り直しても再び負荷に耐えられず切れてしまう恐れがあるので、今回は伸縮性と耐久性を兼ね備えた布状の衝撃吸収材に変更しました。

 

表面の汚れに関してはチーク専用のクリーナーでクリーニングし、保護するためのオイルを塗りこみました。クリーナーとオイルは船舶での使用を想定して販売されているものですが、これは、チークが天然の油成分を含んでいるため水分を吸収しにくく、船舶の甲板によく使われる材料であることに起因します。

 

良いものは適切な修繕を行えばいつまでも使い続けることができる、ということをあらためて実感した仕事でした。

 


塩川

椅子張り担当

好きな作家は内田百閒と尾辻克彦

気になっているゲーム作家はおいし水さん

映画はウェス・アンダーソン監督のファンでしたが、最近は迷子になっています